講師としての予習はどれだけ必要か?
- tsunemichiaoki
- 2024年11月17日
- 読了時間: 11分

本日もセミナービジネス研究所の記事をご覧いただきありがとうございます。あらゆる経営者の方が事業を発展させていく上で、セミナー展開の価値、メリットを感じていただくために、セミナー展開で御社の事業あるいは経営者であるあなた自身のアピールをしていただきたいと考えております。
そのために、セミナー展開をどのように行っていけばよいか、という基本をお伝えするため、そしてご参考になるのでは、という記事を書き連ねております。
前回は、講師採用時にここだけは譲れない、と思って私が押さえていたポイントについてお話ししました。かなり企業秘密に近い内容でしたが、すべてのセミナー会社が同じ基準で行っているとは全く思いませんので、前回の話を基礎としてあなたなりの応用をきかせていただければと思います。
さて、今日も講師ネタですが、講師としての適性がある方が経験を積んでベテランと言われる領域に達したら、果たして予習なしで、ぶっつけ本番で講師ができるのだろうか、という部分に切り込んでいきます。
それでは今回の本文をどうぞ。
第1章 講師が予習をしないなんてあり得るの?
講師登壇の前日の話です。
明日どのような話をしようか、という予習。
講師であれば当然することです。
当たり前でしょ。という声がすぐ耳元で聞こえてくる気がするのですが、あえてここは180度見方を変えて一度考えてみていただけないでしょうか。
どんなプロであっても、準備は必ずします。
ではプロ講師にとっての準備は何か。
それは資料等の予習でしょうか。
もちろんそれは最重要なことではありますが、私個人のやり方ですが実はあるセミナーについては登壇前の前日に資料を読み返すことはしなくなりました。
えっ、と思われるかと思います。
うすうすわかっている方、あるいは同様のことをされている方であっても、このことを公言する方はまずいないでしょう。
なぜか。
それは簡単なことで、お客様をないがしろにしている、と取られてしまうからですね。
顧客重視ではなく、顧客軽視。
サービス業ではありえない対応です。
ですが、私がそのセミナーで資料を前日に再確認しないことで、講師パフォーマンスに影響が出た、と感じたことはもう数年ありません。
少々極端なたとえをしますが、
あなたは毎朝目覚めた時にどのような行動を取りますか。
ほぼ毎日決まった行動を決まった順番で行っていませんか。
トイレに行く、手を洗う、うがいをする、水を一杯飲む、というようなルーティンです。
私の場合、水を一杯飲むとうがいをする、という順番は変わることは絶対にありません。もう何十年も繰り返していることですから、たとえ出張や旅行に行って場所や環境が変わったとしてもその順番は変わりませんし、いちいち次は何をするんだっけ、と考えることもありません。
もし講師業務がそれと同等レベルに熟達していたら、
と考えていただければ私の申し上げたいことはもうお分かりかと思います。
さすがに私の講師パフォーマンスがそのレベルに熟達しているとは申しません。
スライド資料やテキストなしで、すべて空でいつも通りの語りができるか、と言えばそれは無理です。
スライド資料というのは、本当に便利なもので、パッとその資料を見れば何を話そう、ということが瞬時によみがえってきます。
また万が一、機材トラブルでスライド投影ができない、というようなことになっても(あっては困りますが)、その場合は手元にある資料をベースに話をすればいくらでもバックアップはききます。
いかがでしょうか。
このスタンスであれば、講師登壇の前日であっても資料類の再確認は全くせずとも、何も心配もなく床につけます。
もちろん初物(今までのそのセミナーでの講師経験がない、新規開発のセミナーなど)の場合であればこんなことはあり得ません。その場合は何度も繰り返し資料類の確認をしますので、その点は誤解なきようにお願いしますね。
さて、このように書いてしまうと、なんだか非常に傲慢で、自信過剰で、お客さんのことなんてこれっぽっちも考えていないひどい講師じゃないの、と思われてしまうかもしれませね。
登壇前日のチェックは、実は少々違う観点で時間を使っているのです。
第2章 講師としての準備とは?
前日にセミナーで使う資料類を全くチェックしなかったとしてもこの意識だけは必ず持つ、そして再確認することがあります。
何かといえば、ある意味社会人としての基本に立ち返る、ということです。
第一は、セミナー開催場所及び時間です。
何時にどこでスタートなのか。
そこに行くまでには、どの程度の時間がかかり、リスクとしては何があるのか。
万が一の事態としてはどのような想定をすべきか。
このように書いていくと少々仰々しいですが、時間どころか登壇日を間違えてしまう、というのでは笑うに笑えないことになってしまいますが、人間ですから、そのミスが絶対ないとは言い切れません。
いろいろな手段でカバーするしかそれはないわけです。
私の場合であれば、アナログとデジタルでのスケジュール管理を両方ともにやっています。
そしてもう一つは、お客様の意向の再確認です。
どのような思いでそのセミナーにお越しになるのか。
いつものセミナーということであれば気にすることは多くありませんが、たまにしか開催しないセミナーであれば、他のセミナーとの混同を絶対に回避しなければなりません。
そしてもう一つが、自分自身の管理。
体調管理や目覚まし時計のセット、そして講師登壇をするぞ、という緊張感の醸成。
これも人間ですからリスクゼロにはできないことですが、前日は何ら異変がなかったとしても当日朝起きたら体調不良に陥っていた、ということもあり得ます。
セミナーにおいては通常、バックアップ要員の手配はありません。講師が登壇不可になったらそのセミナーはキャンセルするしかありません。
連続した日程で開催するセミナーの途中で具合が悪くなったら目も当てられない、ということになります。
つまりそのような不測の事態で関係者に迷惑をかけないようにしなければならない、という自己管理。
これもある意味、講師としての大事な準備です。
私自身の経験として、今まで相当数のプロ講師と接してきましたが、その中でたった一人だけ、大酒飲みで心配な方がいました。
極めて専門性の高いセミナーでその方以外に講師ができる方がいなかったこともあり、登壇し続けていただきましたが、慣れないうちは毎日ヒヤヒヤしていました。
穴をあけることはさすがにその方もプロ講師でしたからありませんでしたが、やはり反面教師にしなければならない事例だな、と今でも思っています。
第3章 模範的講師はここまでする!
ここまでずいぶんいい加減ではないか、という事例のお話をしてきました。
講師という職業はそのようないい加減なスタンスの人が多いのか、と思われてしまうと、さすがにプロ講師の多くの方からクレームをいただいてしまいますので、今度は模範的講師のお話をさせていただきます。
いつも安定していて、お客様の評価も確実。そして時間管理等もばっちり、という方がおられました。
それなりの年数お付き合いをした段階で、その方から少し時間的に余裕が出てきたので、別セミナーの講師もさせてほしい、というご要望が出てきました。
それまでの実績がありますから、事務局としての大歓迎のパターンです。
そしてその新しいセミナーでも登壇するようになったある時、セミナー前の予習の話にその講師との雑談が及びました。
そこで出てきた話に私は愕然としたのです。
どんな内容だったかというと、
その方の予習は
登壇前日に、話す内容を時間管理も含めてすべておさらいをしている、とおっしゃるのです。
新しく登壇するようになったセミナーだけのことを言われているのかと思ったら、そうではなく、かなりの年数をこなして十分に熟達されたセミナーの時であってもそのようなおさらいをしている、というではありませんか。
教材等も頭の中に完璧に入っておられるであろうに、そこまでされているのか、と本当に驚きました。
そして時間管理やお客様評価が安定している理由もよくわかりました。
また、その過程を毎回経ることで、自信を持って本番に臨むことができる、とその方がおっしゃっていたことも印象的でした。
第1章でお伝えした私の予習と、今お伝えした講師の予習。対極的と言ってもよいでしょう。あなたであればどちらの講師のセミナーを受けたいですか。
第4章 やっぱり最後に大事なことはこれ!
予習しない講師と、完璧な予習をする講師。
ここまで両極端な比較ではあまり参考にならないかもしれませんが、私のスタンスはどちらからも学ぶことがある、というものです。
あくまで自己弁護かもしれませんが、第3章でお話した完璧な予習をする講師の真似を誰もができるか、と問われると、私であれば無理です、と即答してしまいます。
なぜか。
今この文章を書いていて改めて考えましたが、シミュレーションは私の場合は非常に不得手、ということに行き着きました。
どうしても生のお客さんの顔が見えてこないとスイッチが入った気がしないのです。
両者に流れる思いはおそらく大差ないはずです。ですが、そのスイッチの入れ方が人それぞれ相当に違います。
少なくとも私の場合、大きな方向性だけは整理してありますが、一言一句はその場の雰囲気、場合によっては自分の気分によって、その場で決めて言葉を発しています。
ですので、同じカリキュラム、同じ教材であっても、発する言葉が毎回違う、ということすらあります。
そこへのこだわりがないからです。
むしろ大事にしているのは、聞いている方々に伝わっているかどうか。
話すスピードも当然毎回違います。大きな差があるわけではありませんが、特に練習問題的なクイズの場面であれば、受講者の方の反応は千差万別ですから、あらかじめこの言葉を使おう、と想定していても、役に立たない場面に頻繁に遭遇します。
ですので、ここで伝えておきたいエッセンスは何かと言えば、
ここだけは押さえておきたい、という部分が決まっていれば、あとは事前予習不要でぶっつけ本番ということもあり得る、ということです。
とは言え、このやり方が推奨、ということでもありませんのでそこはどうぞ誤解なきように。
ここは経験がある一定量に達しないとなかなか理解しづらい部分ではないかと思いますが、営業経験豊富な方であれば想像いただけるかとも思います。
営業トークの流れ、ポイントは決まっていたとしても、いざ現場、本番の営業に入れば、相手次第で場合によっては変幻自在のトークを繰り出されるのではないでしょうか。
それと全く同じとは言いませんが、基本スタンスは同じです。
そして、前章で登場した、ベテランの領域に達してもみっちり予習する講師のことを今一度思い出してください。
その講師の対応方法は、おそらくすべての講師の鑑になろうかと思います。
講師を依頼する側からすれば、信頼感というものをとても強く感じることができるはずです。
しかしあえて両極端な例を出した意図は何か。
見た目は全く違う二人の講師像ですが、両者に共通するものがあるということをご理解いただきたいのです。
講師を務めるにあたって、基本中の基本であり、最も大事なこと。
それは何か。
いままでこのブログ記事、メールマガジンを色々お読みいただいた方であれば十分にご理解いただいていることと思いますが、念のために最後に記しておきます。
はい、そうです。
受講者の方がいかに理解を深めてくれるか。そのための支援が本当に一生懸命出来ているか。
あえて言えば、
お客様への愛情
です。
これがある講師の方は、基本的に失敗するセミナーにはなりません。
もちろんこれさえあれば、いつもすべてのセミナーでお客様大満足、とは簡単には行きませんが、この基本を外さなければプロ講師として合格です。
これならそれほど難しいことではないのでは?
と感じた方もおられるでしょう。
はい、決して難しいこととは思いません。
ですが、
もし受講者人数が20名、30名と大人数になった時は?
オンラインで相手が画面オフの状態だった時は?
というシーンまで考えてみてください。
この場合は、対面式で例えば3人の人に向けて開催するセミナーとは相当に様相が異なります。3人の対面式であれば、それぞれの人との密接な関係を築きやすいわけですが、30人のオンラインセミナーであればどうしても一人ひとりに気を配る、ということは難しくなってきます。
その難しい設定の中で、プロ講師としてのパフォーマンスを出すことができるか。そして出し続けることができるか。
私にとってもこれはこの先もずっとチャレンジし続けなければならない課題です。
今日はここまでとさせていただきます。
お付き合いいただきありがとうございました。
(了)
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