ISO研修講師日記Vol.1(講師と受講者と研修企画担当者)
- tsunemichiaoki
- 2024年12月15日
- 読了時間: 7分

今回の講師はとある上場企業の全国の方が集まるオンラインでの研修。
一企業の社員の方だけが集まる、私たちの言葉でいう、講師派遣型コースのISO9001内部監査員養成コースの講師でした。
以前にも担当したことがある企業で、毎年のようにかなりの数の内部監査員候補者を養成されている会社です。従業員規模からすると(関連会社を入れても1万名未満)、毎年数十人規模の内部監査員養成はずいぶん多いな、とは感じていましたが、多くの人材を養成しよう、と考えてくださるありがたいお客様です。
以前の担当時は、同社に出向いて対応しましたが、今回私の担当する回は全国の関連会社の方も入った回でオンラインでの実施。
初めて長時間にわたる研修をオンラインで受ける、という方もいらっしゃったのですが、無事終えることができました。
オンライン研修は、全国どこにいらっしゃる方でも手軽に受講できるので本当に便利なツールですが、万が一PC等の機器、あるいは回線に不具合があるとどうしようもなくなってしまいます。今までもう相当な回数オンライン研修を実施してきて、大規模なトラブルには幸い遭遇したことがないので助かっていますが、いつも一抹の不安が消えない中での実施です。
さて、今回書き記しておきたいな、と思ったことは社員研修を企画する立場の方に向けてのメッセージになります。
ISOの内部監査員になるには、どうしても基準文書への理解が必要です。
基準文書は、最も大事なものは社内にあるマニュアル。
ISO9001であれば品質マニュアル。ISO14001であれば環境マニュアルです。
そしてそれらを読み解く上で大事になるのがISO規格への理解、ということになるため、世の中で開催されているISO内部監査員研修においてはISO規格の解説が必ず入っているものです(時間の長い、短いの違いは各社各様です)。
私たちの行う研修では、規格はやはり大事なものだ、というスタンスから、お客様の方でよほどアレンジしたオーダーメイド型コースをご要望されない限り、標準カリキュラムで実施すると5時間近い規格解説関連の時間を設けています。
そして、これは講師として覚悟しているし、ある意味腕の見せ所とも言えるのですが、規格解説の時間は多くの方にとって眠気との戦いになる可能性がある、ということです。
法律用語ほどではありませんが、聞いたこともない単語が出てきたり、何のことを言っているのさっぱり、ということも規格の説明時にはどうしても含まれます。
特にオンラインであればなおさらだと思いますが、その場でじっとただ単に聞いているだけ、という状態は、人間にとって最も眠気を催すものです。
特にお昼ご飯を食べた後。
もうこれはほとんどアウト、と言ってもよいくらい眠い時間ですよね。
ですが、この時のお客様方は本当に素晴らしい方々が集まっておられました。
実は眠そうにしている人というのは、オンラインの講座であってもリアル会場で行う集合研修の場合であっても、講師からはよく見える、わかるものです。
一人だけが眠そうにしているのであれば、何をしているのだ、と言いたくなってしまいますが、何人もの人が眠そうにしていると、いかんいかん、こちらの話がつまらない、単調になっているか、という反省材料を提供してくれるものです。
そんな中、この企業の方々は本当に皆さんまじめに講義を聞いてくださっていました。
ただ、実はこの先がありまして、ここまでは十分な状況なのですが、コース内容自体は、その講義を踏まえて、演習に取り組んでもらいます。
講義と演習の組み合わせ。
これは研修企画をする上ではとても大事なことですから。
さて、しっかり講義を聞いてくれたかな、という感触の下、演習に入っていきます。
その講義と演習の繰り返しで、力量向上を図り、内部監査員として実践でご活躍いただきたいわけですが、結論から言うと、今回は講師側の指導力不足を露呈しました。
演習がうまくいくかどうか、じつは毎回ヒヤヒヤしながらその場面に突入するところがあるのですが、今回は用意していた演習は、参加の方々には正直難しいものになってしまいました。
演習がいくつもあってパターンを選べるのであれば違うかもしれませんが、そこまでの準備はないため、いつも通りの演習教材に取り組んでいただく中、講師としては、現場でチューニングをしながら、そのお客様のレベルに合わせた内容での演習取り組みを行う余地はある教材になっています。
しかしそのレベルでは対応しきれませんでした。
結果として、受講された方々は、できた、という感触が持てない方が多く出てしまった、という講師としての反省です。
何回、いえ何十回とすでに実施しているコースでありながら、その場でお客様のレベルを判断してレベルの微調整をする、という能力がまだまだ私には不足、ということに気づかされたわけです。
もちろん、その場で最大限できうる範囲での調整はしたつもりです。
しかし最終的にはそのレベルでの調整ではこの時のお客さまにはフィットしませんでした。
そしてそれらの状況は、先方の会社の研修企画担当の方はずっと2日間張り付いてチェックされておられたので、十分にご理解いただけたと思っています。
そうであれば、特に今回は、今期ご発注いただいている2回分の1回目だったこともあり、次回の実施に向けてのご要望等があるはずなのですが、オンラインだったということもあり、早々にその方もオンラインプラットフォームから離脱されてしまいました。
うーん、その方にとって、この2日間のパフォーマンスをどう評価、判断されたのだろう、ということがこちらとしては気になるわけですが、何も情報を残してくださいませんでした。
できれば研修終了後、そのことについての意見交換がしたかった!
でも残念ながら、その日は何事もなく帰路につくことになってしまったわけです。
長くなってきましたので、そろそろ終わるのですが、ここから感じていただきたいことは、受注側の努力は当たり前なのですが、発注側も遠慮なく、研修状況の監視をしていただき、受注者側に注文を付けてほしい、ということなのです。
特に研修は生ものです。
録画を取っていればあとでチェックする、ということは不可能ではありませんが、実質は皆さんお忙しいゆえに、録画しても見ることはないでしょう。
そうなると、リアルで行われていた直後に結果についての議論、意見交換をすることがとても大事になります。
研修企画担当者の方は、発注側ですので、遠慮なく見たこと、聞いたこと、感じたことを厳しい視点で受注者側(研修提供者側)に伝えていただきたいのです。
もちろんその時間も無駄で、その業者はあまりにレベルが低いから二度と発注しない、ということもあるでしょう。そのような場合はもちろん、何もなくバッサリ、というのはOKです。
ですが少なくとも今回の企業さんの場合であれば翌月にリアル会場での第2回開催が計画されていることもあり、講師ではなく、研修会社の事務局に今回の実施を踏まえて次回はこうして欲しい、という要望を出してほしいのです。
その場ではなく、事後、講師のいないところでそのようなやり取りをするケースはもちろんありませんが、経験上それは極めて少数派です。
これまでの経験上、かなりの企業様の担当者の方は、こちらに対して強い要望を出される、ということはないのです。
もし企業の研修企画担当の方がこの記事を読んでいただいているようであれば、ぜひ、遠慮なく研修会社側、講師側に要望を出してください。
そしてその要望にどれだけ応えることができるか、応えようという気概があるか、というのが研修会社を選定する上での最も厳しく効果的なポイントです。
初回なので、少々長くなってしまいました。
次回はもう少し簡潔に書きますね。
最後に。
『本日のひとこと』
■ISO研修企画担当の方は、研修会社・講師を使い倒そう!
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
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