講師経験浅いようだが・・・
- tsunemichiaoki
- 2024年7月16日
- 読了時間: 13分

本日もセミナービジネス研究所の記事をご覧いただきありがとうございます。あらゆる経営者の方が事業を発展させていく上で、セミナー展開の価値、メリットを感じていただくために、セミナー展開で御社の事業あるいは経営者であるあなた自身のアピールをしていただきたいと考えております。
そのために、セミナー展開をどのように行っていけばよいか、という基本をお伝えするため、そしてご参考になるのでは、という記事を書き連ねております。
前回は、日曜日夜の・・・という話から、講師として緊張にどのように向き合えばよいのか。というお話をさせていただきました。緊張しないということはあり得ない、ということが結論であり、緊張していて当然、と思うと少し気持ちが軽くなることをお伝えしたかったわけですが、その先は経験から学ぶしかありません。誰もが通り、講師初心者の場面。今回は私のその体験についてお伝えします。
それでは今回の内容です。どうぞ。
ある日のこと。
無事、新作の1日セミナーの講師を終えたと思って後片付けに入りました。
セミナー実施時は毎回アンケートを参加された方にお願いしているので、その時も全員の方にご記入いただきました。お客様の事務局の方が回収してくださったので、片付けの手を休めて、サラサラっとそのアンケート評価の確認を始めます。
まずまずの点数がついているな、と思いながらパラパラ見ていると、点数評価をしてあるだけでなく、ご丁寧にコメントが書いてあるものに行き当たりました。
そして多くのものが良い点数のところに丸をつけてくれている中で、そのシートの点数評価はまあ可もなく不可もなく、というところに丸が。
そして書かれていた内容は・・・
さて、今回の内容は、お客様はよくこちら(講師)のことを見ているし、その見方は大抵の場合正しい、ということをお伝えしたいと思って書き始めました。
講師デビューからしばらく経って、ある程度の経験を積んでくると色々なことができるようになってきますし、チャレンジもしたくなってきます。
ですが、それはうまく行けばリターンは大きくなるものの、失敗すればロスも大きくなるという裏腹の関係でもあります。
ではそのような場面に遭遇した際にどの先どのような道を歩んでいくべきか。
どなたかのご参考になれば、と思い書き綴りました。
それでは本文をどうぞ。
第1章 セミナーの基本はお客様の解消したいことへのアプローチ
(1) ある時お客様からメニューにないコースの要望が届いた
社内がざわついていました。
別部署の人々が会議を行っていたのですが、結論が出ていないようです。
私は部署が異なるため、その議論には加わっていません。ですが、大きな会社ではありませんから、簡単な打ち合わせであればわざわざ別室にこもることもなく、オフィス内にある小さなテーブルで意見交換をすることが度々あります。そうすると、議論の内容はよくわらからずとも、何となく揉めているな、結論がスムースに出ていないな、という感触が周囲にいる社員にはそれとなく伝わってきます。
その時も、その打ち合わせでは期待した成果が上がっていない状況であるのことを感じ取ることができていました。
しばらくしてその会議の主催である別部署の部長と雑談する時がありました。
聞いてみると確かに会議では期待した成果が出ておらず、その後の議論もあまり進んでいないようです。そしてその内容はといえば、あるお客様からこのようなセミナーができないか、という個別のリクエストが届いたというもの。
聞いてみると確かに私達が当時展開していたセミナーメニューとはずいぶん異なる要望でした。その部長のセクションではそのようなメニューにはない新しいセミナー開発を請け負う部署だったために話が持ち込まれていました。
一方で、私は開発済み商品の中でも主力商品の運営管理をする立場にいましたので、事なかれ主義でいくなら、「そうなのですね。それは大変ですね。頑張ってください」で終わりにしてしまえば良い場面でした。
(2) 自ら手を挙げる
さあここでどうするか。
何となく心がざわついた私は、その部長に更に質問を重ねていました。
「そのお客さんの要望、もう少し詳しく教えてもらえませんか」
そうやって立ち話のレベルながら話を聞いていくと、お客さんの悩み、要望がだいぶ理解できるようになってきました。
確かにそうだよな。その部分はうちの会社の一般セミナーでは全くカバーしていないし、よその会社のセミナーではおそらく表面的な対応はできるだろうけど、うちの専門分野のところについてはカバーできないしな、というところが見えてきました。
要するに、セミナー会社それぞれの専門分野ではカバーしきれない、ある意味新たなお客様ニーズが発見された瞬間でした。
同時に、だったらこう融合すればいいじゃないか、というイメージが私の中に生まれてきたときでもありました。
「それ、私、できると思うのですが、やらせてもらえませんか」
と深く考えることもなく、新たなチャレンジの良いチャンスと思って声を出していました。
「えっ、ホント?やってくれるの」
とその部長から。
「ええ、なんとかなると思いますよ。開発期間ある程度いただけるのですよね」
「まあ、そこまでお客様側も焦ってという話ではないから、そこは相談しながら時期も決められると思うのだけど」
「わかりました。私が自分で開発して自分で講師をする、ということであれば他の方の負担をかけるわけでもないですから、問題ないですよね」
「ああ、じゃあお願いできるかな。うちの部署も助かるよ」
ということで、みずからある意味勝手に新たな仕事を請け負ってしまいました。
さあ、社内には過去にそのようなセミナーは存在しません。参照する過去事例がない状態で、ゼロからの設計開発をしなければなりません。
大変だ!!!!
ということなのかも知れませんが、どこかのネジが一本抜けていた私にとっては、さあなんか面白いことになってきたぞ、という脳内思考になっていました。
第2章 講師自らのコース開発そして講師対応
(1) 大胆な構想設計
自ら勝手に手を上げて背負い込んだお荷物。
もし自分の上にうるさい上司がいたらこっぴどく叱られる場面かも知れません。ですが、そのときは部長の立場でそれなりにフリーに動いていましたし、困っていた部長は実は取締役でもあったため、その人にある意味、恩を売るようなこともでき、という状況でしたので、普段の仕事に穴を開けさえしなければ、上層部からも部下からも文句は何も出ないはず、という意識でいました。
そして何より自分で一から作っていける、という魅力はとても惹きつけられるものがありました。
どうして簡単に手を挙げることができたかというと、それまで自社で展開してきている主力セミナーには、ここが足りないよなあ、と感じている部分があることと、マイナーなセミナーながら、新たに自社で展開を始めたセミナー群に興味をもって参加した時に、ああ、これなかなかいいじゃない、と感じることがあった、という背景があったからです。
簡単に言えば、両者の融合系を作ればいいんだよね、という自分なりと感覚です。
あとは、肉付けをしてそれを1日セミナーにすればいいだよね、という自問自答が先の部長との会話をしていた時点から生まれていました。
(2) 新商品開発の基本
これでお感じいただけた部分もあろうかと思います。
セミナーの新規開発も、世の中の新商品開発の基本メソッドと同じといっても良いのです。
基本メソッドは何かと言えば、ゼロから新発明ではなく、すでにあるものの組み合わせによって、新たなものを生み出していく、ということです。
ここまでお話してきた、新しいセミナーを作ります、自分で対応します、と言った件も、これとあれとあれをこんな感じで組みあわせて、その上で自分なりの思いをプラスアルファすればなんとかなるのではないの、というイメージが自分の中にある程度出来上がったことが大きな一歩だったわけです。
このイメージが湧くかどうかが実は大きな分かれ目です。そこがそう簡単には行かないよ、という声が挙がることもまた事実です。これができるようになるためには多少の勉強とトレーニングは必要なのですが、決して難しいことではありません。そちらはまた機会があればお話するようにしましょう。
第3章 自信をもって講師対応を務める
(1) 当日のトラブル
話はいきなり当日に飛びます。新商品開発のコツをお伝えしましたので、あとはそのイメージに則って教材等の開発を進めれば、自分が講師を務めるのですから、流れの理解はできていますし、教材の使い方で迷うこともありません。
さあ、やってやるぞ、という気持ちでお客様のところに向かうのでした。
しかしです。
ことを成就させるのはそう簡単ではありません。
いざ、事前にお客様のところに送ってあった荷物を開梱して、セミナー開始の準備をしていたのですが、一気にまずい状況に追い込まれます。
受講される方もどんどん集まってきます。ぱっと見るだけで自分より年上の方々ばかり。加えてこちらはトラブルの最中。
何のトラブルだったかと言えば、音声を流すために使うスピーカーがPCとの接続でうまく行かずに機能しないのです。
その研修は、コミュニケーションスキルを磨くことが主題でしたので、事前に教材に仕込んでいた良い例、だめな例を動画として流すのに音声が出ないでは話になりません。いくら接続方法を変えたり、再度一からチェックしてもウンともスンとも言ってくれません。お手上げ状態でした。しかし救いの神ありとはまさにこのことで、先方事務局の方が、うちの事務所内にスピーカーあったはずなのでもってきましょう、と気を聞かせてくださいました。何とそちらにつなぐと一発で問題解消。
何とか予定の時間にセミナーを始められたのでした。
(2) コンテンツへの自信
さあ、気を取り直してセミナー内容に集中です。
どれくらの時間を要したでしょうか。スピーカーのトラブルからおそらく1時間もかからずに平静な精神状態を取り戻し、予定のカリキュラムを消化していく状況にもっていくことができました。
そうなればあとは自分で作った教材等です。受講者からの反応が想定外であれば動揺することになりますが、その反応も想定内のレベルに収まってくれています。これなら一気に最後までこちらのペースで行けるぞ、と思ってどんどん進めていきました。
途中笑いも起きるなど、参加者の受講態度もありがたい状況で、予定のカリキュラムを全てこなして時間内に無事終了。パチパチパチという状況でした。
さあ、これで終わりであれば、何だ、単なる自慢話か、と言われてしまうと思いますが、ここで最後にまた一発食らうのでした。
第4章 お客様の評価と自己評価、どちらを大事すべきか?
(1) アンケート評価に書かれたこと
最後の一発がなにかといえば、アンケートです。
セミナー開催時には絶対とは言えませんが、やはり受講した方にアンケート調査は行うべき、というのが私の考えです。
そしてそれはこの記事の冒頭に記した内容のことです。
アンケートの回収も終え、後片付けの最終局面にある中で、回収できたアンケートの内容をパラパラ見ていた時に、あるコメントに目が止まりました。
「講師経験浅い人のようだが・・・」
なに!
そこから言いたいことは何なの?
という感情が私の中にすぐさま噴出します。
わざわざ名前まで記入されていて、その時の参加者におけるトップの方だ、ということがすぐわかりました。
セミナー受講者には、現場担当だけでなく、わざわざトップまで参加してくれるんだ、ありがたいな、偉いトップだな、と思ってセミナーを始め、一方で、セミナー中はそのトップも柔和な表情を示していたので、それなりに満足してくださっていたと勝手に盲信していたわけです。
先に記したアンケートに書かれていたコメント。
簡単にそのコメントの意図を記せば、
『年齢も若いし、講師としての経験もあまりなさそうだし、本当にこのセミナーを我が社の社員に受けさせてよかったのだろうか』
という思いの現れ、ということです。
無事セミナーを終えて、まずまずの手応えを感じていたのに、経営者の評価は・・・、
ということです。
ガ~ン・・・
という感じです。
何で?元々はそちらのニーズに基づいて対応したセミナーでしょう!どこに文句があるの?
と声を出していいたい気持ちでしたが、相手はもうその場にいないし、当然いたとしても言えることではありません。
たしかに「経験浅い」と言われれば、講師経験はまだまだ初心者ではないものの浅い時期でした。
加えて新規開発のお披露目セミナーです。
成熟した出来栄えとは言えなかったでしょう。
しかし全てが後の祭り、ということです。
あああ~。
一気に疲れが全身を支配するような状況になり、とぼとぼとその会社をあとにするのでした。
ーーーーー
さいごに
ーーーーー
なんだか暗いトーンになってしまいましたね。
ご容赦ください。
ですが、現実問題として、セミナーは準備をしっかりして講師がそこに思い入れを持って行えば、必ず大成功、ということには残念ながらならないことはこれでご理解いただけると思います。
失敗を恐れてチャレンジしないのは最もダメですが、チャレンジした結果、討ち死にということもあり得ることは忘れてはいけません。
話がここで終わってしまうとあまりにも悲惨な感じになってしまうので、一応その後のことまで記しておきます。
経営者からはあのようなコメントを貰ってしまいました。そして発注者側の事務局担当者も似たような感想も持ったかも知れません。ですが別な見方もしっかりしてくれていました。
良かったから別の事業所でも開催して欲しい、という追加リピートオーダーがその後入ったのです。
さらにその後も何回かの開催がその組織でできました。
そしてそれは独自商品、自分しか対応できない商品がしっかり生み出された瞬間にもなりました。
2度目以降のアンケートでは、経営者層の参加もなかったからでしょうか。前述のような厳しいコメントは一切出ることなく、参加された皆さんが何らかのことを感じ取ってくれたことがわかるアンケートばかりになりました。
背景には自分も2度目、3度目になって自信と余裕が生まれた、ということも背景にあるのでしょう。
そう考えると初回のあの厳しいアンケートコメントがあったからこそ、2度目に慢心することなく、良い結果を生み出す対応ができた、とも言えるわけです。
人生万事塞翁が馬、とまでは申し上げるつもりはありませんが、セミナー講師は思い入れを持って取り組んでいれば、誰かは見ていてくれるものだということを、身をもって感じる機会となりました。
それから十数年、その時開発した教材等を使った別バージョンセミナーがその時とは異なる組織で開催され続けていたのですが、お願いしていた別の講師が対応できなくなり自分にお鉢が回ってきた、というか戻ってきました。
以前アップした、「また腹痛が・・・」という記事に繋がる話なのですが、あらためてあの大阪でのセミナー会場の光景、スピーカーから音声が出ずに、代替のものを急遽用意してくださったときのシーンを思い出しました。
あのときのトップの方も事務局の方もそのお名前までは思い出せないのですが、NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)の皆様、ありがとうございました。
(了)
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